ギャンブル依存症治療に公的医療保険を適用 厚生労働省が検討

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厚生労働省は20日、ギャンブル依存症の治療を公的医療保険の適用対象として検討する方針を提案しました。

健康保険制度や診療報酬の改定について審議を行う、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(以下中医協)にて同日提案が行われ、来年2020年度の診療報酬改定での保険適用化を目指す予定です。

IR開業に向けて政府はギャンブル依存症対策を進めており、2018年7月にはギャンブル等依存症対策基本法が成立。
この法律によって、各自治体にギャンブル依存症の予防や医療機関の整備、社会復帰支援等の各種対策の実施を義務付けています。

今回の公的医療保険の適用もIRに向けたギャンブル依存症対策の一環と考えられますが、治療費が国民の税金や保険料から捻出されることになるため、反発の声が上がることも予想されます。

日本におけるギャンブル依存症の現状

ギャンブル依存症は日本がIR開業を進めるにあたって最も懸念される問題です。
国際的にも「ギャンブル障害」という精神障害の一つとされており、診断基準に該当する数の多さで症状の重さが判断されます。

カジノが開業されていない今でも、日本は他国と比べギャンブル依存症が多い国と言われています。
2017年に行われた厚生労働省の調査によると、生涯でギャンブル依存症の疑いがある状態になったことがある成人は3.6%(約320万人)、過去1年以内では0.8%(約70万人)と推計されています。
世界的に見ても、オランダ1.9%、フランス1.2%等であるのに対して、日本の3.6%は非常に高い割合であるということが分かります。

日本におけるギャンブル依存症の原因としては、依存症者数3.6%に対して、パチンコ・パチスロに最もお金を使ったという人の割合が2.9%で最多となっています。
しかし、これまで日本ではパチンコ・パチスロがギャンブルであると法的に認められていなかったため、依存症対策が非常に遅れているのが現状です。

そんな中、IR開業に向けて整備された「ギャンブル等依存症対策基本法」で、パチンコに関する法律が正式に追加。
カジノだけでなく、パチンコ等を含めた本格的な依存症対策が進められています。

「ギャンブル依存症治療プログラム」は日本を救うのか?

厚生労働省はギャンブル依存症対策として、日本医療研究開発機構(AMED)の研究チームが開発した集団治療プログラムの試験を実施。
この試験は全国35施設でギャンブル依存症の男女187名を対象に行われ、結果としてプログラムを受けていない人よりも、受けた人の方がギャンブルをやめた人の割合が高いという傾向が出ています。
厚生労働省は、この集団治療プログラムが効果的であるとみて、保険の適用の検討を進めています。
ただし、「187名の調査結果で効果を判断できるのか」といった疑問の声も上がっており、更に精度の高い試験結果が求められます。

ギャンブル依存症は自然回復率も高いと言われていますが、自然回復せず重症化する人たちへの対応が課題として挙げられています。
重症化する場合、依存症の併発や多重債務、社会的な重圧によって単純なギャンブル問題だけにとどまらないケースが多く、専門家による治療も必須。
今後は専門家やカジノ事業者とも協力して、多面的にケアを行う体制を整えていくことが必要とされています。

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