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IR区域整備計画を進める3候補地 資金面や規模縮小などの課題も

区域整備計画の申請受付が開始し、いよいよ国内初のIR開業が本格的に動き始めました。
和歌山・長崎・大阪の各候補地は現在、運営事業者とともに国への申請準備を行っています。

今回はそれぞれの最新情報や抱えている課題について、候補地ごとにまとめて解説します。

和歌山:資金調達の確実性や事業者の透明性を懸念する声も

和歌山県は6月、全国に先駆けて「クレアベストニームベンチャーズ及びClairvest Group Inc.のコンソーシアム(以下、クレアベストグループ)」を事業者に選定しました。

和歌山IRのコンセプトは、建設地となるマリーナシティの環境を活かした「リゾート型IR」。
長期滞在が可能で、自然の中でのアクティビティやeスポーツ体験を楽しめる施設が提案されています。

しかし、県議会では以前から初期投資額約4,700億円の調達方法や、事業の継続性や安定性について疑問視する声が上がっていました。
10月8日のIR対策特別委員会でも、基本協定締結当日にクレアベストグループの代表取締役が交代していることが指摘されており、事業者側は経営体制の強化が求められています。

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開業4年目の目標来訪者数約1,300万人、雇用創出約1.4万人を掲げているクレアベストですが、その実現性については批判的な意見が出ていました。区域整備計画を作成する中で、県が求めるレベルで事業を運営できるかの再検討が必要とされています。

日本を撤退したシーザーズ、和歌山コンソーシアムへの参加が明らかに

和歌山IRでは当初、日本に拠点を置くIR開発・マネジメント会社「AMSEリゾーツジャパン」と、ヨーロッパでゲーミング施設やリゾート運営を行う「Groupe Partouche(パルトゥーシュ)」の2者がクレアベストグループのコンソーシアムに参加することが発表されていましたが、9月29日、新たに「シーザーズ・エンターテインメント・インコーポレーテッド(以下、シーザーズ)」が加わることになりました。

シーザーズはアメリカで80年以上の歴史を持つ企業でリゾート産業やゲーミング事業を手掛けており、一時は日本でのライセンス取得に向けて活動していましたが2019年に撤退。
今後、県から正式な承認を得られれば、再び日本市場への参入を目指すかたちになります。

長崎:「安心安全」を大前提としたIR実現を目指す

長崎県は治安対策やギャンブル依存症に取り組むため、2020年11月から官民一体の協議会を設立。
その準備会となる会合が10月5日に開催され、事業予定者であるカジノオーストリアも参加しました。

カジノオーストリアは、法令順守や安心安全を最優先にして経営にあたっていることを強調し、地元住民からの治安に関する質問についても、「カジノ区域外においても警察との連携を強化する」との意向を示しています。

また、翌10月6日には代表の林明男氏が市議会全員協議会に出席。
「最高スペックの計画を国へ提出し、何が何でも認定をこの地に持ってくる」と、区域整備計画の認定に向けて意欲を見せました。

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カジノオーストリアは長崎IRで自社最大規模のカジノを展開、粗収益として1,500億円を想定しています。その収益の中からカジノ納付金や入場料として県が得られる収入は、年間約310億円と試算されています。

世界トップレベルのMICE施設を計画、イメージを公開

長崎IRのコンセプトは「真の和洋折衷」「モダンジャパン」。
ヨーロッパの「ストック&リノベーション(いいものは壊さず残して使っていく)」文化を応用し、ハウステンボスの既存の建物は改修して活用する計画がなされています。

9月28日には新たにMICE施設となる国際会議場や展示場の内部イメージを公開。
ポストコロナ時代を見据えてオンラインでのイベント開催や別会場との連携に対応した展示場や、ガラス張りの外壁を採用して眺望にこだわった国際会議場など、世界最高水準のMICE施設を目指すとしています。

大阪:初期投資額は候補地最大の1兆円超えだが、計画変更に不安も

大阪府・市はほかの候補地より少し遅れ、9月28日に「MGMリゾーツ・インターナショナル」と「オリックス株式会社」のコンソーシアム(以下、MGM・オリックスグループ)を事業者に選定。
区域整備計画については、自治体と事業者で共働し2021年中には作成する見通しです。

MGM・オリックスグループは、事業者選定と同時にイメージパースも公開。
あらゆるものを結ぶ役割のIRと、水都大阪の伝統・文化・精神を継承する「結びの水都」をテーマとし、IRを通して関西に新鮮な驚きや感動を生み出すことを提案しています。

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参入の意思を示していた事業者が続々と撤退する中、最後まで大阪に立候補し続けていたMGM・オリックスが正式に設置運営事業者として選定されました。MICE施設のほか、3ブランドのホテルや日本食を楽しめる施設の設置なども予定されています。

初期投資額は候補地最高ながら、規模縮小への懸念も

大阪IRが誘致に名乗りを上げた当初は、2025年の万博に合わせて全面開業し、相乗効果を狙う予定でした。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大等の影響を受け、現在は万博以後の2020年代後半に部分開業と方針を変更しています。

MGM・オリックスグループは、初期投資額として1兆800億円の投入を発表。
しかし、府・市が求めている展示施設の面積についても最初の計画であった10平方メートルから2平方メートルに引き下げられていることなどから、事業そのものを不安視する声も上がっています。

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