大阪IR用地の鑑定額、3社の一致については審議されていないことが判明

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大阪IR用地である夢洲の不動産鑑定額が4社中3社で一致した問題について、IRを考慮せずに鑑定した点や鑑定額の一致については審議されていなかったことがわかりました。

大阪市は「価格については適正と判断されたため問題ない」としていますが、審議委員会の不動産鑑定士や専門家からは疑問の声も上がっています。

市は「問題ない」とするも、鑑定額の一致は審議会で議論されず

IR建設予定地・夢洲の賃料などの鑑定額について、大阪港湾局はこれまで「鑑定結果が適正かどうかを検討する第三者機関の審議会で価格は妥当と判断されたため問題ない」と回答していました。

しかし、一部メディアが審議会の委員を務めた不動産鑑定士への取材を行ったところ、3社の価格の一致やIRを考慮外としていた点については審議の対象になっていなかったことが判明しました。

鑑定士らは取材に対し「審議会はすでに決まった条件を与えられ、その中で価格が適切かを判断する場所であり、すべての情報を見て審議を行っているわけではない」と話しています。

そのため「ショッピングモールで12万円は妥当か」という審議の仕方になっており、IRが考慮されていないことはすでに決まった状態で審議にかけられていました。

3社の鑑定額が一致していることについても委員から疑問の声は上がりましたが、市と鑑定業者とのあいだで問題ないとされているのであれば、そもそも審議対象ではないため、それ以上深く議論することはなかったとのことです。

大阪市はこの件に対し、1月30日に「説明は行ったが、話し合われてはいない」とのコメントを発表しています。

不自然な一致や評価書への未記載に専門家らも疑問の声

50年以上にわたり不動産鑑定に従事した経験のある不動産鑑定士の田原拓治氏は、「3社の価格が一致するということは100%ありえない」と話しています。

また、1平方メートルあたりの月額賃料が428円でと極端に安価であるという点については、「評価に使える取引事例が大阪市にないと決め付け、全国の規模のある事例を探した。結果的にそれらの事例が安いから安価な鑑定額になったのでは」との見方を示しています。

大阪市は1社の鑑定業者から「IRの国内実績はなく、評価上考慮することは適切ではない」との相談を受け、4社に意向を確認したうえでIRを考慮しない形での鑑定を依頼。

各社は国内のショッピングモールなどの大規模商業施設を参考に賃料を鑑定したとのことですが、田原氏は不動産鑑定評価書にその説明や根拠が記載されていないことへも疑問を呈しています。

当時、審議を担当した鑑定士からも「何らかの力やきっかけがないと3社の一致にはならない」「鑑定業者は最後まで説明責任を残すべき」との意見が上がっており、大阪市や鑑定業者の今後の対応が注目されます。

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