8月28日、安倍晋三首相が持病の悪化を理由に辞任することを発表しました。
首相後任を決める「自民党総裁選」への出馬を表明した菅義偉氏、岸田文雄氏、石破茂氏の3者のIR政策に関する見解が注目されています。

総裁選出馬の3者「IR政策は原則推進」

9月3日現在、立候補を決意した3名は、IR政策に対しての否定的な言動を見せていません。

IR法整備などに関与していた人物もいるため、基本的に前向きな姿勢を見せていますが、コロナ禍で実現が可能かを解明していく必要があり、時間を要するとの見解を示しています。

それぞれの実績やスタンスは以下の通りです。

菅 義偉 氏(現・官房長官)

菅氏は現在、内閣官房長官としてIR法整備を推進しています。

2020年1月には、IRについて「日本が世界の人々に来ていただく観光先進国を目指すうえでは必要」と言及しています。

2017年3月に設立され、全閣僚で形成されているIR推進本部(特定複合観光施設区域整備推進本部)の副本部長を務めているため、首相に任命された場合はIR推進が動く可能性もあると見られています。

岸田 文雄 氏(現・自民党政務調査会長)

岸田氏は、2018年4月に自民党政調会長として、IR整備法の政治決定部分を承諾しました。

また2019年9月には、日本におけるIRの議論はカジノに費やされているという分析から、シンガポールリゾーツ・ワールド・セントーサを訪問し「実際にIRを見ることでカジノに対するイメージが変わる」と述べています。

海外のカジノを視察したうえで日本に合ったIRの導入を検討し、意欲的な姿勢を見せています。

石破 茂 氏(元・自民党幹事長)

石破氏は9月1日の総裁選出馬会見にて、「カジノの是非よりもコロナ禍において、実現可能なのかという分析を冷静にする必要がある。」と述べています。

また、幹事長時代にはシンガポールのカジノを視察しており、現地カジノのような不正行為の対策や設備を作り上げるためにも、日本でも法律の作成やギャンブル依存症対策が必須だと考えています。

総裁選は9月8日に告示、14日に投票が行われます。

首相辞任を受けIR候補地の反応は―大阪府市・方針の変更はなし

自民党は安倍晋三首相を中心としてIR推進を進めていましたが、首相の辞任によってIRを誘致する候補地の自治体にも影響が及ぶのではないかと心配の声があがっています。

自治体は現在も政府のスケジュール延期に影響を受けていますが、候補地の1つである大阪府市は首相の辞任表明を受け、IRの実現について方向性の変化はないとしています。

大阪市長・松井一郎氏は日本維新の会の代表、大阪府知事・吉村洋文氏は同党の副代表を務めています。
2人が所属する日本維新の会は、官邸との関係が良好であることから、IR誘致の有力候補とされています。

8月28日の会見で松井市長は、IR実施法が可決し自民党中心の政権という状態であれば首相が誰であろうと進んでいくだろうと見解を示し、国の基本方針がいつ出てもいいように準備を進めるとしています。

吉村府知事も、IR政策は自民党政権が国として必要として進めてきた政策であるため、政権が大きく変わらない限り方向性の大きな変化も起こらないと述べました。

現在はコロナ対応が優先とされ、IR基本方針の決定時期は白紙のまま半年以上も遅れをとっている状況です。
またIR構想は、安倍晋三政権が成長戦略として組み込んだものであるため、首相辞任によって進行状況がさらに悪化する可能性もあります。

政府は2020年代半ばにIR施設の開業目標を設定しているものの、コロナウイルスの収束が見込めない事態、そして首相の後任により進行状況が変わる恐れから、IR計画の見通しが立たない状況が続きます。

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